色素レーザーVbeamⅡとは

当院では、米国シネロン・キャンデラ社製の最新のロングパルスダイ(色素)レーザーVbeamⅡを導入しています。VbeamⅡは、厚生労働省の承認を得た色素レーザー機器です。血管病変の治療に効果があり、血液の色素と反応して血管をふさいで、徐々に目立たなくしていく治療です(1回の施術ですべての血管をふさぐことはできませんので、#血管腫のレーザー治療は、間隔をあけながら何回か繰り返し治療を行うことで、症状を徐々に改善させていきますが、症状が完全になくなるわけではありません)。
効果がある疾患
毛細血管奇形
以前は単純性血管腫と言われていました。生まれつきのもので血管が腫瘍性に増殖したもので、「赤アザ」といわれることもあります。自然に消えることはありません。
乳児血管腫
以前は#苺状血管腫と言われていました。生まれた時から、苺の表面のようなざらざらとした赤アザです。成長とともに軽快することが多いですが、色味や盛り上がり、皮膚のたるみが残ることもあります。生後早い時期からの治療が推奨されています。
毛細血管拡張症
様々な原因で、顔の皮膚がぼんやりと赤く見えたり、クモの巣のような細い血管が透けて見えたりします。一般に加齢や紫外線の影響でより目立ってくるようです。保険適応となるのは、鼻、鼻周囲、頬部の狭い範囲などで、顔全体や頬部全体などの広範囲の毛細血管拡張症は保険適応外となります。
※上記の疾患は保険適応となっております。以下の疾患は有効性が報告されていますが、保険適応はありませんので自費診療となります。
尋常性ざ瘡
いわゆるニキビのこと。色素レーザーの照射により皮脂分泌の抑制効果やニキビ菌:P.acnesの殺菌、抗炎症作用、ピーリング効果など効能が報告されています。
赤ら顔
毛細血管拡張症とほぼ同義。赤みの範囲が広い場合は自費となります。当院では、広範囲の赤みが気になる場合は赤みの改善以外にもさまざま効能が期待できるレーザーフェイシャルをお勧めしております。
老人性血管腫
加齢とともに腕や脚、体にできる小さい赤い点状の血管腫です。
尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
エキシマライトやナローバンドと呼ばれる光線を照射する治療やステロイド剤やビタミンD製剤を外用する治療が一般的ですが、難治な場合には、血管を熱凝固して、表皮を正常化させる効果が期待される。
肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)
傷跡や炎症後の皮膚が赤く盛り上がりひきつれた状態となっております。色素レーザーによって血管周囲への熱の影響で皮膚の中(真皮)がリモデリング(再構築)されるため症状が緩和するようです。
尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)
いわゆるイボのことです。ウィルスの感染症で手足に好発し、学童期から青年期の活動性が高い年代に好発します。刺激で増大する性質があるため治りにくいです。通常は、液体窒素で加療しますが難治な場合は、色素レーザーを検討してみてもよいかもしれません。
治療が受けられない方・禁忌
下記の病気や症状がある方、下記薬剤の使用中の方は治療を受けられません。
- ペースメーカーや植え込み式除細動器を使用中、重篤な心疾患に罹患
- 糖尿病などの内分泌疾患に罹患しており、創傷治癒に障害がある
- 免疫抑制を引き起こす疾患、免疫抑制剤使用中
- 出血性疾患に罹患、抗凝固薬を内服中
- 妊娠中、またその可能性がある
- ケロイド体質
- 発熱している・全身状態が芳しくない
- 光過敏性発作・光線過敏症に関連した疾患に罹患・既往
- 光過敏症を誘発する薬剤・外用薬・サプリメントを使用中
治療を行えない部位
- シリコンや金属プレート等の人工物を埋め込んでいる
- 感染性の皮膚疾患又は、切開創・開放創・炎症・化膿がある
- 悪性腫瘍直上、単純ヘルペス1型、2型の活動病変上
- 2週間以内の強い日焼け部位
- 刺青・アートメイク上
治療の流れ(保険診療)

基本的に、レーザー治療は通院で行うことができます。しかし治療範囲によっては麻酔(または局所麻酔)が必要な場合もあります。
診察・診断
初めて診察を受けられる時は、ご予約いただくか窓口でその旨お話ください。
まず、担当医師による診察があります。医師によってレーザー治療に適しているものかどうかを判断します。
テスト照射
レーザー治療に同意されて治療を開始することになれば、当日または後日に予約を取ってテスト照射を行います。これは標準的なエネルギー光をあてて患部の反応をみるものです。場合によっては、30分間以上局所麻酔用テープまたは麻酔クリームなどを使用することもあります。
表面麻酔が効いたところで、レーザー光を照射します。1週間後または担当医師が指示した日に外来を受信していただき、テスト照射部分を判定し、その後のスケジュールを決めます。
本照射(治療開始)
テスト照射の後、反応をみて本照射に入ります。ご希望によっては、麻酔を使用します。麻酔使用の場合は、予約時間の30分前に来院していただき照射部位に局所麻酔テープまたは麻酔クリームを貼っていただきます。表面麻酔が効いたところで、照射を始めます(乳幼児や広範囲の場合は全身麻酔になることもありますのでその場合は、大学病院などにご紹介させていただきます)。
照射が終了すると患部に軟膏を塗り、軽くガーゼをあてます。その上から軽く冷やしてください。照射はこれで終了です。
1週間後、または担当医師が指示した日に外来を受診していただき反応をみます。
その後だいたい3ヶ月ごとに治療をしていきますが、治療内容によっては治療期間を調整します。治療効果には、患部の状態によって個人差が出てきますので随時治療計画を立てて進めていきます。
治療後のケア
治療当日、患部は病院で処置されたままでお過ごしください。レーザー照射当日の入浴は控えていただきますが、翌日以降は可能です。翌日以降も熱いお風呂や患部をこすって照射後にできたかさぶたを取らないようにしてください。患部は翌日から適宜ワセリンなどの刺激が少ない保湿剤を患部に外用してください。患部のダウンタイム(肌が元の状態に戻るまでに必要な期間)が心配な方や治療効果が気になる方は事前にテスト照射(自費の場合は、診察料込みで2000円)を行っております。
施術後の通院間隔は、肌の状態にもよりますが、施術後1~2週間後、1か月毎で副作用の有無や肌の状態を確認します。また、3ヶ月以上過ぎた段階で必要時追加照射を行います。
治療経過と注意点
- 治療開始前に日焼け止め等を取り除き、皮膚を清潔な状態にして頂きます。日焼け止め等の成分が皮膚に残っていると、熱傷の原因になります。
- 照射後、皮膚は軽い熱傷(赤みや腫れ、水ぶくれ)を起こしている状態になりますが、2週間程度で治まります。
- 治療直後から翌日に、紫斑を伴う場合がありますが、7日から10日前後で消失します。
その後照射部位は一時的に色が濃くなることもありますが、数ヶ月で消失します。 - 痒みが出る場合がありますが、掻かないようにしてください。掻いて皮膚を刺激することで色素沈着を起こす原因となります。
- 治療部位の状態によっては照射直後から1週間程度はワセリン等の軟膏を塗布する場合があります。治療後のケアについては個別に説明をいたします。
- 紫外線の暴露は一過性の色素沈着等を引き起こす可能性があります。治療中は日焼け止め(SPF30以上)等を使用して日焼けをしないようにしてください。
- 症状により治療回数は異なりますが、治療を重ねることで徐々に血管が目立たなくなり、色素が薄くなっていきます。
- 単純血管腫、乳児血管腫(苺状血管腫)、毛細血管拡張症は保険診療が適応となりますが、3ヶ月に1度の治療となります。(次の照射まで3か月と1日は間隔を開ける。)
※ロングパルスダイレーザーによる皮膚良性血管病変の治療は、症状により治療方法、治療期間が異なることをご理解ください。
特殊な治療:レーザーフェイシャル(自費)顔全体の治療です。
VbeamⅡによるレーザーフェイシャル

VbeamⅡによるレーザーフェイシャルには以下の4つの作用があると考えられます。また、医療用LED:イオン導入、トレチノイン酸やビタミンC誘導体含有化粧品などを適宜併用するとより高い効果が期待できます。
- 赤ら顔の改善(表在性の毛細血管を破壊する)
- 美白効果(ソバカスやくすみを取る)
- 吹き出物を少なくする(ニキビの治療、赤みの軽減、ニキビ痕を目立たなくさせる)
- 皮膚のコラーゲンを活性化させる(小ジワを目立たなくさせる、肌のキメを細かくする、ハリをもたせる)
赤ら顔の改善
赤ら顔の改善の効果は、VbeamⅡのレーザー光が血液中の酸化ヘモグロビンに吸収されやすいという特性を生かしています。従来は、パルス波色素レーザーによる赤ら顔のレーザー治療が一般的でしたが、レーザー照射による紫斑傾向が非常に強く、10日程度持続するため、日常生活への支障がありました。VbeamⅡの場合、レーザーの照射時間(パルス幅)が非常に長くピークパワーが低く設定されているため皮膚に対するダメージがマイルドで、また皮膚の表層を冷却ガス(DCD)で保護できるという特徴を持っています。従って、日常生活に支障をきたすほどの紫斑はなく、お化粧も行えますが、一時的に顔全体が腫れてしまうことがあります。通常3日目あたりがピークとなり1週間程度で消退します。
美白効果
美白効果は、VbeamⅡが表在性のメラニンにも反応し、また同時に皮膚の表層をDCDで保護するという特徴を生かしています。ソバカスや肌のくすみなどの薄いシミをマイルドに改善していきます。Qスイッチレーザー治療で見られる「ダウンタイム」はなく、ソバカス等の薄いシミやくすみを徐々に目立たなくしていきます。麻酔も必要とせず、レーザー照射後しっかりクーリングしていただいた後は普通にお化粧できます。VbeamⅡはスポットサイズが大きく照射スピードも速いため、フルフェイスで照射する場合でも短時間で済み、結果として全体的な顔の美白効果が期待できます。
吹き出物を少なくする
吹き出物(ニキビ)を少なくするという効果は、炎症を起こしている部位にレーザーを照射し毛胞内などに介在する雑菌が殺菌されることによって得られるものと考えられます。結果として、ニキビを早く治癒していきます。また、炎症による赤みに対してもダイレーザーの波長は酸化ヘモグロビンに吸収されやすいためその赤みを軽減していきます。同時にニキビ痕についても目立たなくさせる効果があります。
皮膚のコラーゲンを活性化させる
皮膚のコラーゲンを活性化させる効果については、ジェントルレーズのレーザー光が皮膚深部まで到達し、そのレーザーエネルギーが熱に変換され、皮膚内で軽い炎症を起こすことで得られると考えられます。皮膚の線維芽細胞の活性化、そしてコラーゲン産生の促進によって、肌の内側からキメやハリを改善していきます。
留意事項
- 治療後は十分な遮光、日焼け対策を行うこと。
- レーザー照射後は冷やしたフェイシャルマスク等で十分クーリングして下さい。また、部分的に炎症が見られる場合、リンデロンV軟膏などのステロイド剤を塗布して下さい。
- 通常約4週間おき、計5-6回の治療が必要で、初回治療だけでは十分効果が現れないこと、徐々に改善させていく治療方法です。
- レーザー単独療法より併用療法(イオン導入、トレチノイン酸やビタミンC誘導体外用など)を適宜併用するとダウンタイム(皮膚が正常に戻るまでにかかる時間)の軽減やより高い美容効果が期待できます。